資本金1円で会社は作れる?設立前に知っておきたい5つのお金の落とし穴
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「資本金1円で会社が作れるなら、ほとんどお金をかけずに起業できる?」
会社設立を調べ始めると、そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。株式会社は、法律上、資本金1円で設立することが可能です。ただし、資本金の額と、開業に必要なお金の総額は別です。設立の手続きにかかる費用も、最初の売上が入るまでの支払いも準備する必要があります。
今回は、沖縄で会社設立を考えている方に向けて、「1円で設立できる」という言葉だけでは見えにくい、5つのお金の落とし穴を解説します。
資本金は「できるだけ少なく」から考えるのではなく、開業時の支出、入金までの期間、許認可の条件を整理して決めましょう。会社を作った後に、無理なく事業を続けられるかが大切です。
制度確認日:2026年9月19日。一般的な国内の会社設立を想定しています。
1.「資本金1円」と「設立費用1円」は違う
資本金は、出資に基づき会社に計上される金額です。役所や専門家に払って終わる手数料ではありません。一方、設立登記の登録免許税などは、会社を設立するために必要な支出です。
主な法定費用を比べると、次のようになります。下表の登録免許税は軽減措置を適用しない通常の場合です。
| 費用 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金×0.7% 最低15万円 | 資本金×0.7% 最低6万円 |
| 定款認証手数料 | 原則3万〜5万円 一定の小規模設立は1万5,000円 | 公証人の認証不要 |
| 紙の定款の印紙税 | 4万円 電子定款なら不要 | 4万円 電子定款なら不要 |
株式会社の認証手数料が1万5,000円となるのは、資本金の額等が100万円未満で、①発起人が全員個人で3人以下、②発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨を定款に定める、③取締役会を置かない、という条件をすべて満たす場合です。資本金が少ないだけで自動的に対象になるわけではありません。
証明書の取得、定款の謄本等、依頼する場合の専門家報酬などは別途必要です。したがって、表の最低額がそのまま「設立の総額」になるわけではありません。
出典:法務省「会社登記Q&A」「株式会社の設立手続」「合同会社の設立手続」、日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」、日本行政書士会連合会「法人・企業支援」。
2.売上が立っても、すぐにお金が入るとは限らない
開業後は、家賃、仕入れ、広告費、通信費、人件費などの支払いが始まります。仕事を受注できても、代金の入金が翌月や翌々月になる契約なら、それまでの支出を手元資金でまかなわなければなりません。
例えば、小さなサービス業を始める場合を考えてみましょう。次の数字は相場ではなく、資金計画の考え方を示すための仮定です。
- 設立・開業準備の支出:40万円
- 毎月の事業の支出:30万円×3か月=90万円
- 予備資金:20万円
用意する事業資金の目安:合計150万円
毎月の30万円には、役員報酬や社会保険料の会社負担など、想定する支払いを含めて見積もります。税金、設備代、仕入代などに不足があれば上乗せし、経営者個人の生活費も別に確認します。
この150万円を、すべて資本金にしなければならないという意味ではありません。出資、融資、役員からの借入れなど、調達方法と入金時期を整理します。融資を見込む場合も、審査中の資金をすでに使えるお金として計算しないことが大切です。
また、出資として払い込んだお金は、設立後、会社の正当な事業支出に使えます。資本金100万円に加えて、その同じ100万円をもう一度運転資金として用意する、という二重計算をしないようにしましょう。資本金の登記額と、その時点の預金残高も同じものではありません。
関連コラム:創業・開業時に融資は受けるべき?受けない場合との違いと、資金計画の考え方
3.「社長一人だから社会保険は関係ない」と思ってしまう
従業員を雇わずに会社を始める場合でも、社会保険の確認は必要です。法人の事業所は、事業主のみの場合も含め、原則として健康保険・厚生年金保険の適用対象になります。
実際の被保険者資格は、報酬や勤務実態、年齢などの条件を踏まえて判断されます。役員報酬がない場合なども含めて、加入の要否を一律に決めず、年金事務所や社会保険労務士に確認しましょう。
資金計画では、役員報酬の金額だけでなく、社会保険料の会社負担も支出に入れます。「自分に毎月いくら払いたいか」と「会社が毎月いくら支払うか」を分けて考えると、設立後の資金不足を防ぎやすくなります。
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」。
4.資本金1,000万円未満なら、消費税は必ず免税だと思ってしまう
「資本金を少なくすれば、設立後2年間は消費税がかからない」という説明だけで判断するのは早計です。設立1期目・2期目は原則として基準期間がありませんが、免税になるかどうかには例外があります。
例えば、適格請求書発行事業者としてインボイス登録をしている場合は、資本金が1,000万円未満でも免税事業者にはなりません。2期目の特定期間に関する判定や、特定新規設立法人などの例外にも注意が必要です。逆に、各期首の資本金等が1,000万円以上である場合は、新設法人の特例によりその期の納税義務が免除されません。
さらに、「2期」と「丸2年」は同じではありません。決算月の設定によって1期目が短くなることもあります。資本金、決算月、取引先が求める請求書、設備投資の予定を整理し、税理士に確認してから決めましょう。
出典:国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」。
5.会社ができれば、そのまま営業できると思ってしまう
会社の設立と、事業に必要な許認可の取得は別の手続きです。例えば沖縄県の建設業許可では、経営体制や技術者などの要件に加えて、財産的基礎・金銭的信用に関する要件も確認されます。
つまり、会社法上は少額の資本金で設立できても、予定する事業の許認可を取得できるとは限りません。「会社を作ってから調べる」順番では、資金や事業目的、事務所の条件を見直すことになる場合があります。
設立前に、何を、どこで、誰に提供する会社なのかを具体化し、必要な許認可と開業までの手続きを確認しましょう。資本金の額だけを基準にするのではなく、許認可でどのような財務資料や資金の証明が求められるかまで確認するのがポイントです。
出典:沖縄県「建設業許可の概要」。
資本金を決める前の5つのチェック
- 設立・開業にいくらかかるか:法定費用、物件、設備、専門家への依頼費用を整理する。
- 最初の入金はいつか:受注日ではなく、実際の入金日まで資金が持つかを確認する。
- 毎月いくら出ていくか:役員報酬、社会保険料、税金も含めて見積もる。
- 資本金と税務の関係を確認したか:決算月やインボイス登録も合わせて検討する。
- 事業に必要な許認可を取れるか:財務、事務所、人員などの条件を先に確認する。
「資本金はいくらが正解か」は、業種や支払いのタイミングによって変わります。最低額から逆算するより、開業後に必要なお金を積み上げ、その資金をどう用意するかを決めると、会社設立の計画が具体的になります。
沖縄で会社設立を考えている方へ
行政書士かりゆし法務事務所では、会社設立に向けた定款作成や、事業に必要な許認可、創業計画の整理に関するご相談を承ります。「まだ会社の形や資本金が決まっていない」という段階でも、事業の構想からお聞かせください。
登記申請の代理は司法書士、個別の税務相談は税理士、社会保険の手続きは社会保険労務士など、内容に応じた専門家への確認が必要です。